白倉伸一郎・武部直美と鈴木福が語る平成仮面ライダー「創業秘話」(2) ゼロ年代の「若手俳優の登竜門」化、そして『ゼンカイジャー』へ

白倉伸一郎・武部直美と鈴木福が語る平成仮面ライダー「創業秘話」(2) ゼロ年代の「若手俳優の登竜門」化、そして『ゼンカイジャー』へ

特集記事

 前回、テアトルロードでは『セイバー+ゼンカイジャー スーパーヒーロー戦記』の公開を記念し、白倉伸一郎・武部直美両プロデューサー鈴木福さんで、平成仮面ライダー「創業秘話」をお話しいただきました。

『セイバー+ゼンカイジャー スーパーヒーロー戦記』公開記念!白倉伸一郎・武部直美と鈴木福が語る平成仮面ライダー「創業秘話」(1)

 そして後編となる今回は、「若手俳優の登竜門」となっていった平成ライダー初期の展開ライダーのオーディションでプロデューサーは何を見ているか特撮制作の現場、さらには現在の『ゼンカイジャー』『スーパーヒーロー戦記』のお話などを伺います。それではさっそく、いってみましょう!

初期の平成ライダーは「若手俳優の登竜門」じゃなかった?

今回の『スーパーヒーロー戦記』では、プロデューサー補の方々も平成ライダーを見ていた方が本当に多くて、本当にスタッフのみなさんがライダーが好きで繋がってきたシリーズなのかな、と思ったんですけど。

でも、最初は繋げる意識なんて誰も持ってなかったんですよね。昭和の仮面ライダーって最初のうちはさておき、2年ずつしか続いてない。1999年に石ノ森作品の『燃えろ!!ロボコン』をやって、そのあと『クウガ』をやろう、って話で始まっている。

その次の『アギト』も、世界観としては『クウガ』の続編ですしね。

今みたいに毎年続く仮面ライダー「シリーズ」をやろうなんて、誰一人考えてなかった。というか平成ライダーの初期って、仮面ライダーのイメージは今みたいなものじゃなかった。「黄金バ〇ト」とか「赤胴鈴〇助」とか、そういう感じ。

「月〇仮面」とか(笑)。ちょっと古い感じ、ですかね。

昔にものすごくヒットしたことがある昭和っぽいもの、ちょっとかび臭い、ぐらいのイメージだった。

だから役者さんが、「仮面ライダー出たい」なんて、とても言わないような……。

僕は出たいです(笑)。

でも、福くんみたいに若い子が「出たい」って言ってくれるようになったり、「若手俳優の登竜門」って言われるなんてイメージは、全然なかったんです。それは、『仮面ライダーカブト』(2006〜2007年放映)の水嶋ヒロさん、『電王』の佐藤健さんぐらいの時期からですよね。

『仮面ライダーカブト』(画像は東映ビデオオフィシャルサイトより)

その前だと、事務所の人に「仮面ライダーに◯◯さんに出演してもらえないですか?」ってオファーすると、「なんでうちの役者が仮面ライダーごときに出なきゃならないんだ!」って怒られる。

へー!

オーディションに来てくれる人も、悪い意味じゃないですけど、「ヒーロー番組がずっと好きだから」という方に偏っていた感じですね。映画のゲストとかでベテランの方にお声がけしても、断られることも多かった。

断られるどころか、「謝れ!」って怒られる。

(笑)

でも、そんな時期はすぐそこにあった感じなんですけどね。それこそオダギリジョーさんをはじめ、ライダーを卒業したあとすごく活躍してくれたから、だんだん「登竜門」と言ってもらえるようになった。
『アギト』の賀集利樹さんも要潤さんも、「オーディションは初めてです」って方でした。『555』の半田健人さんも現役の高校生だったので、卒業までは神戸から通ってもらっていました。原石として輝いてる人を捕まえるしかなかった。

今やすっかり「若手俳優の登竜門」的なイメージの仮面ライダーですが、初期のキャスティングはなかなか難しかったのだそう。

僕らみたいな、番組を見てただけの人には全然わからない光景ですね。

今なんか夢のようです。「ライダーの主役なのですが、一度面談させてくれませんか」ってお願いしたら、大抵の事務所さんは会わせてくれますから、いい時代だなと(笑)。

「オーディションやります」って言ったって人が集まらないから、俳優じゃない事務所、例えばスポーツ系とかモデル系とか、普段付き合いのないところにも広げてやってたね。

「JUNON」さんのところに行って倉庫漁りさせてもらって、「この子はいまどうしてるんですか?」って聞いたりとか。今でこそ若い男の子の出演機会も増えて、ワタナベエンターテインメントさんや研音さんにも若手俳優がずらりといるけれど。
2000年代以前は若い女の子の出演機会は朝ドラなんかでありましたけど、若い男の子の場合は「若手刑事A」とか「若手社員A」とか、そういう役ぐらいしかなかった。今は学園ドラマやライダーも含め、出演機会が増えたかもしれないですね。2.5次元舞台もありますし。

2000年代半ばに「若手俳優ブーム」が起きた

まあ実は、肌感的には『ごくせん』のおかげが大きいんだよね。

そうですね。『カブト』『電王』が、ちょうど『ごくせん』の第二シリーズ(2005年)の少し後で。

2000年代の半ばから後半にかけての時期ですね。

新人俳優の大きな受け皿になってくれて、若手俳優の注目度が高まってきていました。

女の子向けのティーンズ雑誌が、男性モデルを使うようになった時期もその時期ですね。本屋に行くと女性向けのコミックス雑誌やティーンのモデル雑誌にライダーや戦隊のキャストが『彼氏役』で出たり、表紙を飾ったりするようになりました。
いま、「Seventeen」とかでイベントがあると必ず男の子モデルも出ますけど、それまでは女の子しか出てなかったと思います。そういう若手俳優が注目される時期と、ライダー・戦隊が上手く乗ったな、っていうのはあります。

若手の俳優さんの仕事がそんなになかったというのは、確かにそうなのかなって思って。
今でこそ、登竜門になっている時代で、僕も周りの俳優仲間もそうだと思いますけど、ライダーはやっぱり憧れの場所としてあるんです。
タイミングとかもあるでしょうし、お二人の力だったりとか、当時の制作陣のみなさんが本当にすごいんだなっていうのを改めて感じました。

その時期からあとは、仮面ライダー「シリーズ」としてどうなのかっていうことを意識してるって感じがする。

それは『仮面ライダーW(ダブル)』くらいからでしょうか?

『仮面ライダーW(ダブル)』(画像は東映ビデオオフィシャルサイトより)

そうですね、『W』くらいからですね。

平成ライダーを見ていた人たちが脚本家やプロデューサーになってきたりして、焼き直しというか……。

自分なりの解釈っていうかね。

そうですよね。さすがに10作も続くと、まったく新しいものはなかなか……というのもあるのかな。

プロデューサーは、オーディションで何を見ているか?

よく白倉が言うのが、『アギト』で決まった要潤さんは、オーディションの時、ルックスはとても目を引くものがあったのですが、お芝居はなかなか下手だったんですよ。

(笑)

オーディションのときに限らないけどな。

えーっと……要さんには大変失礼かもしれませんが、今回取材にあたって『アギト』の序盤を見返してみたのですが、やっぱり当時の要さんの演技はなかなか……。

そうですよね(笑)。でも、白倉が「仮面ライダーG3は彼で決める」って言って、みんな「え、マジ?」となっていた。でも要さんはそれからどんどん売れていきましたよね。
あとで白倉に「よく要さんの素質を見抜けましたね?」って言ったら、「いや、彼はどんな形でも世の中に出たと思うよ」と言っていて。

そういう部分って、オーディションではどこを見ているんですか?

一番気にしてるのは、コミュニケーション能力。俳優さんって台本を読んでその意味を理解できないと仕事にならないし、その解釈が自分と監督とで違った場合、それをすり合わせなきゃいけないんですよね。監督の言うことを「ハイ、ハイ」と聞けばいいとも限らないし、自分の主張を押し付ければ済むというものでもない。

白倉さんがオーディションで見ているのは「コミュニケーション能力」とのこと。その中身は一体……?

そこで監督、あるいは共演者という「人」とのコミュニケーションを取った上で、自分の役、そしてシーンを作っていかなきゃいけない。
だから一番大事なのは「人と話をできること」。口がうまいかうまくないかというより、相手の言ってることがわかって、それに対する自分の考えをレスポンスできる、そういう会話力が一番大事なことだと思っているんですね。
だからライダーのオーディションをやるときに一番大事なのは、芝居テストよりも雑談だったりするんですよ。

そうですね。「仮面ライダーがどれだけ好きか」とかって、オーディションでは関係ない。ライダーのオーディションは、「今日の服のポイントを教えてください」とか「一番悲しかった話をしてください」とか、あさっての方向からの質問が多いですよね。そういうときにどういうお話が出てくるかな、って。

ライダーのオーディションでは「演技力」が一番重要ではない……?

やっぱり一方通行でガーッと話してる人だとなかなか難しいかもしれません。もちろん「ヒーローが好き」「仮面ライダーが好き」も嬉しいんですけど、結果には実は関係ない。そのことよりも、ありのままの姿を、ってところでしょうかね。
「もしかしたらオーディションってすごく簡単なことだったりするのかな?」って思うときもあるんです。オーディションって視聴者のみなさんよりも先に私たちがその方を見るわけですけど、私たちの心を動かせない人が、テレビを見る人の心を動かすのは難しいじゃないですか。

ライダーのオーディションといえば、白倉さんのいろんなインタビューで出てくるのが、『電王』のときの佐藤健さんのエピソードですよね。
『電王』は主役が多重人格を演じないといけないわけですけど、佐藤さんは台本だけでそれを読み取って演じ分けたという。そういう台本からの解釈力が大事だったりする、ということなんでしょうか?

うーん、たしかに佐藤さんは解釈力はピカイチでしたけど、それ以上に印象的だったのが「佐藤健という人が楽しそうに演じた」ってところなんです。
言ってしまえば私たちは冷静に見る試験官なんだけど、佐藤さんの演じてる姿を試験官が楽しんじゃった。「こりゃ、お客さんが楽しくないわけがないな」と。

笑いってやっぱりバランスとか間とか絶妙なものじゃないですか。台本を作るときには、オチとか笑いとか、作っておいたりもするんですけど、もしその人の演技で笑えたらそれはお芝居のレベルが高いってことですよね。
やっぱり芝居芝居してたりすると全然クスっともできないので、そういうふうにできるのはすごいかなって思います。

福さんはオーディションもたくさん受けてきたと思うんですけど、今のお話を聞いてどうですか?

そうですね……僕はオーディションをたくさん受けたのは小さい頃で、子役だと「上手い下手」とか、「ちゃんと言うことが聞けるか」で判断される部分が大きくて、「コミュニケーションがちゃんとできるか」はそんなに大きくなかったかな、とは思います。
でも、僕が子役ではなく俳優としてやっていくというときに、台本の解釈だったりは大きいものがあるだろうなと。その中でさっき白倉さんがおっしゃったように、やっぱりコミュニケーション能力は、人と人が作ってる現場だからこそ、欠けてしまったらいいドラマにはならない。俳優って人見知りの人がすごく多いと思うんですけど、「人見知り」と「話せない」って違うと思うから。そこはやっぱり大事な部分なんだなと再確認しました。

オーディションでいうと、例えば4人並んで順番に喋るとして、横の人のお話をずっと聞いてる子とかいますよね。自分の喋るときにだけに集中してるんじゃなくて、他の人の話を聞いていて「なるほどー」って反応をしていたりとか。
まあ、それがいいふうになるかわからないですけど、ときどき私たち以上に隣の子のお話を聞いたり芝居を見たりしている子がいると、面白いなと感じたりはします。

そこにも学ぼうとする意欲があったりとか……。

あるいは好奇心がある人なのかな、って思ったりですね。

ただ単に落ち着かない人もいるんだけどね。

(笑)

オーディションを受ける若い俳優のみなさんにお伝えすることがあるとするなら、失敗しちゃったとか、うまく見せられなくてがっかりするというよりも、実は大体入った瞬間に半分は決まってるってことですね。
映像の世界って、望んでることがすごく狭いんです。例えば大人でいえば背の高さだったり、ルックス面であったり、役の雰囲気に合ってなきゃいけなかったり。

イメージが合っているか、ですとか。

そう、芝居力の前にビジュアル的なイメージが先行する場合もありますからね。端的に言うと、女の役に男の人は向かない。

そのくらいの話ですよね。役者としてすごく上手くても、すごくカッコよくてもハマらないときはハマらない。あと子役さんの場合でも、年齢が1歳違っただけでも「今回は違うな」ということは、どうしてもあるので。

大きい小さい、太い細い、というね。

「今回は大人しそうな子がいい」「ちょっと影のある役がいい」というときは、快活な子は決まらないですよね。だから逆に言えば落ち込まないでほしいです、役に合わなかっただけだから。
『龍騎』の最終オーディションのときに松田悟志さんと小田井涼平さん(※当時の芸名はファーストネームだけの「涼平」)が喧嘩を始めちゃって、松田さんは「やっちゃった、絶対落ちた」って落ち込んだりもしたけど、実はそんなの全然関係ないんですよ(笑)。

学校の入学試験とかとわけが違って、成績優秀な人を選んでるとかではないから。

そう、求めてることがすごく狭いことが多いから、書類の段階で「合う・合わない」ってある程度は決まってる。
だから「その役はご縁がなかった」ってことで次に備えてもらえれば、後で今回の福くんみたいに自分にピッタリ合う役が来たりもするんですよね。「オーディションで決まる・決まらない」がすべてじゃないですよ。
オーディションに慣れてる人はみんなそう思ってるとは思いますけどね。すぐ、「じゃあ次」みたいに、切り替えが上手い人のほうがいいのかな、ってときはあります。こだわってもしょうがないですからね。

そうですよね。そこにプラスして、さっき言ってた「くすっと笑える部分」は僕としていま考えてたんですけど、やっぱりテレビって人が共感できるから面白いじゃないですか。仮面ライダーの場合は「同じ人間が変身する」って部分がすごく強いと思うんです。
まあ、いま白倉さん・武部さんがやられている『ゼンカイジャー』はちょっと違う……のかもしれないですけど。

基本、機械ですけど(笑)。

人があまりにも少ない(笑)。

でも結局、人は人でしか感動できないから。『ゼンカイジャー』だって「キカイ」でもスーツアクターさんが演じているし、声は声優さんが演じているので、「人の心が動かせるのかな」というところで見ている気はしますね。

「いい演技かどうか」を決めるのは自分じゃない

逆に俳優さんである福くんに聞いてみたいですけど、どうやったらいい演技ができるんですか?

確かに。僕も聞きたいです。

(笑)

ええ〜、そうなんですか(笑)。私は演技は、見る方はわかるけれど、自分が演じることはできないから、みんなどうやってるのかなって。
「鏡を見て自分のいろんな表情を研究してる」って人もいたりするし、「1000回セリフは言っている」って人もいるけど、逆に言えばピョッと現場に行って演じられる人もいるのかな、とか。

僕が思うに、自分のイメージしたことそのままできるかどうかはすごく大事なのかなと。「このセリフはこう言おう」って思ってるのに、違う言い方しかできなかったり、表情が笑いたいのに上手く笑えなかったりとかって人もいますし。そのあたりはたくさんトレーニングするしかないだろうなって。
ちなみに「いい演技ってどうやるんですか?」って聞かれましたけど、それって僕が決めることじゃないですからね。

ああ! そうなんですね。

そこは見てくれてる人とか、スタッフさんだったり。

監督が決めたりね。

そうです。自分で「僕、いい演技しました!」って言ってる人って、絶対いい演技してないと思うんです。

福さん、けっこう厳しい!

「やり直させてください」って言う人もいたりするけど、「いや、そこを決めるのは監督だからなぁ〜」というのは、ありますね。

よく「昔の俳優さんは現場に台本を持ってこなかった。全部頭に入ってるから」なんて言うじゃないですか。でも、まったく逆も見たことがあって。
ある有名俳優さんが、一切何も入れずに現場に来て「どの役やるの?」ってまっさらな台本を見て、それで現場で「この衝立(ついたて)に台本置いといていい?」って言って見えないところに台本を置くわけ。
で、それでOK出ちゃうの。はたから見てすごくいい芝居するの。でも、よーく意識して見ると、ときどきチラッチラッと台本に目を落としてるじゃねえかって(笑)。

そんな域に達している方もいるんですね……!

(笑)

だけど、その人はものすごく味のあるいい芝居をした。だから「セリフ覚えてきてくださいよ〜」なんて言う気にもなれなくなっちゃう。もちろん現場にそんな人ばかりじゃ困るんだけど、そういう域っていうのもあるんだなと、変な感心の仕方をしちゃったことがあったね。

そうやって見る人が見たらわかるのもあれば、もちろん自分でよくできたって自分で実感する場合もあるでしょうし、周りから聞いて「あ、そうなんだな」って思うこともありますし。

俳優さんは例えば自分でセリフ喋ってるところを録音したり、ビデオに撮ったりするものなんですか?

方言とかの場合は1回言ってみて、ちゃんと聞いて、とかはしますね。その言い方で作品として合っているかどうかがわからないので。

声って、自分が思っているものと、客観的に聞こえる声って違うじゃないですか。俳優さんは「自分の声が人にどう聞こえてるか」は熟知してるんだろうなっていうのは、よく思ったりもするんですけど。

少なくとも我々一般人は、自分の声が録音されたものを聞く機会ってほぼないからね。

ない! ないです。自分の声を聞くと「わ〜」みたいな感じですごく恥ずかしい。

俳優さんは嫌というほど聞かされてしまう。「チェック〜」と言われた瞬間に聞かなきゃいけない。

自分のやってた感覚よりも、画面を通して見た方が良くなる場合もあるし、でも逆に悪くなる場合もあって、それはそれで面白いです。画面で見たときに「自分キッショ」って思うときもあるんです。

こんなにベテランになっても、そうなんだ(笑)。

福さんはさきほど「いい演技かどうか決めるのは他の人」と言っていたじゃないですか。そしたら福さんって、演技するときにどんなことを考えながらやってるんですか?

もちろん現場に入る前に台本を読んで覚える段階で、「こういう感じだろうな」というイメージはします。でも、セットとかロケ現場の感じがよくわかってない状況だったら全然イメージと違うこともあるし、相手の方のセリフの読み方が全然イメージと違うこともあります。
ただ、お芝居って、相手が何を言うかがわかっててやるものだけど、本来は人間として話をするってなったときは、相手がこれから言うことなんて絶対に予測できないじゃないですか。

福さんのお話からは、長足の進歩を遂げている感じがひしひしと伝わってきます(ボーッと生きている大人である編集部は余計に)。

現場でよく、俳優さんが注意されますよね。「相手から次に何を言われるかがわかってる芝居をしちゃってる」と。

「お前は超能力者かー!」ってやつだね。

もちろんその後の動き、例えば「めくる」「書く」「見る」とか、そういう動きは忘れないようにしなきゃいけないけど、でもそれ以外の部分は、セリフだったりとか、相手が喋ってる間に「次このセリフだな」とか確認することって、あっちゃいけないと思うし。そういうところは気をつけてるのかもしれないです。

「ここで止まる」とか「ここで手を出す」とかって、割と言われたりしますもんね。映像の役者さんって別の才能がある。「ここで手を出して」でカメラ位置からちょっと狂うとだめって言われるから。

監督、カメラマンから「1cm下!」って言われたりとか多いよね。

だからこそドライ・リハーサル(カメラなしで現場でおこなうリハーサルのこと)とか、テストの段階で動きをある程度自分に染み込ませるのはすごく大事かもしれないですね。
でも、「どうやってるんですか?」って聞かれたときに「こうです」って言えないから、僕はわりと感覚でやっちゃってる方だと思います。もちろんレッスンで台本の読み方とかはやってるけど、自分が考えなくても、自然にできるようになるまでやらなきゃいけないと思うし。

レッスンだけやってる人が、突然、それこそマルチカメラのスタジオとかに入って立ち位置バチバチに決まってる芝居をさせられたら、レッスンどころの騒ぎじゃない。

ロボットみたいに固まっちゃいますよね。

頭の中で考えるほうばかりにいっちゃったりとか。だから、考えないで出せるくらいじゃないといけないのかもしれないですよね。

あとは現場に入る前から、「解釈の仕方がたくさんある」ってことを頭の中に置いておくのも大事なことだと思います。
まあ本当は、芝居をしている感覚がないぐらいがベストなんだろうなと思うんですけど……。でもまだ僕には「役になりきる」というところまで行けてないです。まだまだこれからです。ちゃんと説明できるようにがんばらないと。

(笑)

特撮制作現場の現在

ありがとうございます。実はせっかく白倉さん、武部さんのお二人に取材できるのでお聞きしたいのですが、お二人が組むときって白倉さんがチーフで、武部さんがわりと現場寄りで見ていらっしゃるってイメージがあって。

それはですね、解説すると、白倉って結構言葉がキツイんですよ。

(笑)

自分が頭が良い方なので、それで相手方が男性でプライドが高かったりすると、すぐ傷ついちゃったり、闘争心でなんかうまく行かなかったりする場合もあるんですけど、私は女性なので柔らかく「あ、また言ってる〜」とか「また言われた〜」とか言ってたり、他の人にわかるように翻訳してあげたりとか。そういうところが上手くいってるのかなと。

そういうところはあるかもしれないねぇ。

ちょっとフニャフニャしてるんで(笑)。

武部さんって『555』が極まった感じの展開で終わって白倉さんが抜けた後だったり、『電王』のあとに『仮面ライダーキバ』(2008年〜2009年放映)をやったりと、実はものすごく大変なところでブリッジする役目をしてらっしゃるんじゃないかと思ったんです。

うーん、どうでしょうね……。視聴率や玩具の売れ行きは数字で出たりしますけど、やってる方としては、気にしないって言ったら嘘ですけど、作るしかないというのもあるし、「つらい」とか「大変」とか「頑張らなきゃ」とか、あんまりそういう意識を持ったことはないんですよね……。
10年経ったり20年経って、そういう大きな流れとかは見えるかもしれないですけど、どうなんだろうな? 『555』は『555』で大変だったような気もしますので。

当たり前じゃないですか!

(笑)

つまらない答えしか出ないですが、いつも一生懸命やっていたような。何が大変だったかなぁ……でも『特命戦隊ゴーバスターズ』(2012〜2013年放映)のときなんかもそうでしたけど、新しいことをやるときはいつも大変。

いつも大変だね。

白倉さんから見て、武部さんってどんな存在なんですか?

このように、とらえどころがない、掴みどころがない人。苦境を跳ね返すんだけど、バネのように跳ね返すんじゃなくて……。

「グニャ〜」って返してる。

逆境はバネのように跳ね返すのではなく「グニャ〜」と返しているという武部さん。なるほど……!

そういう意味ではメンタルが強くて、とても助かります。

でも、あまり頑張らないので「だめだこりゃ」ってなってるときもある(笑)。あんまりポキっとは折れないのかな。なんていうか、適当に言ったり適当に流したり、スーパーいい加減なので。でも、やるときはちゃんと一生懸命やってます、みたいな感じですかね。
プロデューサーによっては「サブよりはチーフプロデューサーのほうが断然面白い、やる気が違う」という人もいますが、私なんかは『龍騎』とか『電王』は二番手でやらせてもらいましたけど、それでも全然変わらず「自分の作品」って認識があるし。だからもしかしたら、男性の闘争心とかが関係あるのかな、と思ったりします(笑)。

プロデューサーって何タイプかあるんですけど、一番多いのが「自己実現」というか、自分の子ども・分身のような作品を作りたいって考えてやっている人間が、特に東映にはすごく多い気がするんですよね。
こっちはそういうタイプではなくて、綺麗事を言えば「お客さんのためにやってる」というか、みんなが幸せになるためであって、作品に自分を投影しても仕方がないって思うからね。
でも、そうでない人たちもすごくいっぱいいるので、ときどき僕の言葉がきつくなるっていうのは、そういうところでぶつかっちゃったりするのかもしれないですよね。

私も昔、白倉なんかは技術のことも詳しいので「白倉さんみたいになれない」ってしょんぼりしたときもあったんです。でも「10人いれば10人、タイプの違うプロデューサーがいる」って話を聞いて、なるほどと思って。
まあ女性ということでいえば、男性のライターさんと組んでると「やっぱりプロデューサーは女性がいいよね」って言われたりしたことはあるかな。テレビ局でも、TBSさんはかなり前から女性プロデューサーが活躍していましたね。テレビ朝日さんも最近、女性の方が多いですよね。

男同士は、男だけで固まるとマウンティングが始まったら手がつけられない、ってところはある気がする。

そこで武部さんが違う角度を持ち込んだり、とかってことですかね。

撮影の現場ってマネージャーさんとか記録さんとかは女性が圧倒的に多いし、この業界は決して女性に優しくないとか、そういうことはないです。そもそも主演で女優さんがしっかりいて、いないと成り立たなかったりするから。
最近は技術パート、照明さん、音声さんもそうだし、メイクも昔は男性が多かったけど、最近はほとんど女性ですよね。そういう意味では働きやすいというか、あんまり区別・差別がない世界かなとは思いますね。

僕はこの世界はまだまだ最近ですけど、全部署に女性がいますよね。メイクさんとかは特に女性ばっかりだし。

なんか、やりやすいときとかもありますよね。

ライダーに関してはまさに母親層に見てもらう上で、武部さんの視点は大きかったのではないか、という推測をしている記事もあったりしますけれど。

うーん、そこも実は難しいですよね。まあ男と女って2つに分けると、作るものとか視点は無意識に違うのかなって、女性ライターさんと一緒にやってるときは思いました。
私がよく言う話ですけど、男性ライターの描くヒロイン像とか妹像とか、ときに気持ち悪いときがあるんで。「そんな妹いねえよ!」みたいな(笑)。「みんな行ってきて! 待ってるから」とか「頑張って、◯◯君!」って言う美女ばかりがいたりとか。何もしないで応援するだけの女がいて、これが理想なのって(笑)。

男でも見てて気持ち悪くなるときがある。

(笑)

女性ライターはやっぱりそういうのはないので(笑)。でも作品に女性的な視点を入れてるかって言われると、無意識に入ってるのかもしれない、ぐらいですかね。戦隊もライダーも、女性がプロデューサーや脚本をやってると女児の視聴率が上がると言われたときもありますが、実際どうかというと……。

そうとも限らないんですよね。そもそも戦隊シリーズでは、4歳から12歳の子ども層だと、3割は女児なんです。たまにその率が跳ね上がるときがあって、『手裏剣戦隊ニンニンジャー』(2015〜2016年)とかは5割ぐらいだった。

『ニンニンジャー』はまさに武部さんがチーフプロデューサーでしたよね。

『手裏剣戦隊ニンニンジャー』(画像は東映ビデオオフィシャルサイトより)

そうですね。たしかにそのとき、そういうことはちょっと言われましたね。でも『ニンニンジャー』はライターさんは男性でしたからね。

男の子が減ったのか、女の子が増えたのかは見方にもよるし、それが武部の影響なのか、それともめぐり合わせなのかは実はよくわからない。
ライダーでいうと『電王』は非常に女児率が高くて、男の子以上に女児がよく見てた番組で、『仮面ライダーウィザード』(2012〜2013年放映)はそれ以上に高かった。ただ、「プリキュア」が代替わりしたタイミングで女児が跳ね上がったから、『ウィザード』の中身というよりも「プリキュア」の影響のほうが大きかったかもしれない。

(笑)

そうですよね。一概には言えないというか。

そう、女性プロデューサーがとか、女性脚本家がとかっていうのも、一概に言えない。

でも、そういえば白倉・井上コンビのときって「ヒロインが待ってるだけ」とかはないですね。『アギト』でも真魚(まな)ちゃん(=風谷真魚/演:秋山莉奈)は自分が超能力を持ってるし、『龍騎』でも優衣ちゃん(=神崎優衣/演:杉山彩乃)は物語の中心なので。ただ単に「頑張って! ここで待ってるから」って応援するだけのヒロインじゃなかったりして、それは何なのかな? と思うときはありますけどね。

井上敏樹さんの脚本は、そういうのはあまりないですね。

そうなんですよ、女性が自立してるなって作品がすごく多くて。

というか、キャラクターというか「人格」として見てるんだよね。「対象物」じゃない。女性キャラを「人格」として見るか、愛玩とか憧れとか「対象物」として見るのかという視点の違い。

まあ「現場にかわいい女の子がいたほうがやる気が上がる」という人もいるし、その逆で「イケメンがいた方がいい」っていう人もいるし、丸一日オーディションをやる日とかは「男子は先で、女子は後にしましょう、そのほうが頑張れるから」と言うプロデューサーもいますけど(笑)。
でも、白倉とかは「男子のほうが中心だから大事だ」と言っていて、役の重要度によるのかなという感じです。そういう意味でも、男性も2つに分かれるのかなって気もします。まあ、特撮にかぎらず他のお仕事でも、みんな一緒かもしれないですけどね。

『機界戦隊ゼンカイジャー』で挑戦していること

今お二人は、放映中の『機界戦隊ゼンカイジャー』をプロデュースされてますよね。今回お二人が入られてることについて改めて聞きたいなと思いまして。戦隊にマンネリ化を少し感じていて、そこを打破していきたいという気持ちなのかな、と思うのですが。

マンネリ化を打破したら、みんな機械になっちゃった。

みんな機械に。

みんな機械になったのは、もとはコロナが影響しているんですか?

コロナを旗印にしてるのは事実です。「こうしなきゃいけないんです!」って。でも本当は、ただの旗印です。
どうしても私なんかは「ライダーの係の人」みたいになっちゃってたところがあって、戦隊をなおざりにしていたわけではないんですが、そこは反省があるんですよ。最初に言ったように、今のライダーはちょっとつけあがってるから。

(笑)

でもスーパー戦隊の方は、「いや。自分たちはライダーとは関係ないし」という独自路線を歩んでたりして。ライダーはもともとシリーズでもなんでもなかったのが、だんだんシリーズになっていったけれども、戦隊はとうの昔から「スーパー戦隊シリーズ」として途切れずにやってきている。それはそれでいい面もいっぱいある。

様式美がある。

そう、様式美そのものは否定すべきことではない。たしかに美しいから。だけどちょっと意固地になりすぎてる気もするんですよね。スタッフは優秀だし、魅力的なキャストがやってるんだけど……「スーパー戦隊としてどうか」という価値基準だけで作っちゃってるところが若干見える。
たとえば最近コロナでできませんけど、打ち上げをやると、俳優さんが「伝統あるスーパー戦隊シリーズの1ページを刻むことができて光栄です」って言わなきゃいけないムードがあったりとか。

「伝統」を背負わなければいけない宿命をもつ現場独特の難しさ、でしょうか。

関係ないじゃん。

そう、関係ない。「いち俳優として出てるのに、なんで1ページにさせられちゃうわけ?」っていう。

「月9の1ページ」とか「大河ドラマの1ページ」とか言わないですよね。

言わないよね。不思議なシリーズなんですよ。

私は戦隊の『ゴーバスターズ』をやったときに、ライダーと戦隊ではデザイン会議からして全然違うなと思ったんです。
ライダーは前年の否定から入るというか、ベルト一つにしても「全部変えよう」ってところから始まるんだけど、戦隊はデザインにしてもプロデュースにしても、「今年のモチーフはなんですか? 忍者? クルマなの? 早くしてくださいよ」って待ってて、「それ決まったら一斉に仕上げます」みたいな感じ。「それでいいんだっけ?」と思いながらやっていた。それを変えようとしてるってことですかね。

今回、『ゼンカイジャー』はもちろんシリーズの中の一作ではあるんだけど、「戦隊としてどうか」というより「番組として面白いものをつくろう」と。
『ゼンカイジャー』は2021年時点で存在する価値がある番組だって言える番組作り、制作現場にしようというとき、ある程度シリーズを破壊することにならざるをえないんですよね。破壊が目的ではないんですけど、ある程度破壊しちゃうことになったとき、他の誰も責任を取れないから。

じゃあ自分でやろう、責任を取れる人がやろうって(笑)。

そうね。

本当にツッコミどころ満載で面白いです。こんな言い方したら失礼かもしれないですが、ずっとボケ倒してますよね。ツイッターのトレンドとかによく入ってるけど、番組側がボケで、見てる側がツッコミ、みたいなコンテンツとしてできてるんじゃないかなって(笑)。

オープニングからツッコまれるためにやっている。

ツッコミ不在なんだよ。ふざけてるつもりはないんだけどな。なぜああなってるんだ?

(笑)

『スーパーヒーロー戦記』は何を祝っているのか?

今日お話を伺うまで知らなかったんですが、平成ライダー初期は「仮面ライダー」というものの実体がほとんどなくなっていて名前だけある状態だったから、「じゃあ逆にそれを利用して、ただ面白いことをやろう」という気持ちだったわけですよね。

番組として同時代的な価値のあるものをつくろう、ということですね。

今は「ライダーで何をしよう?」になっちゃう。

戦隊はライダーより縛りが大きいんですよ。

『ゼンカイジャー』は初期平成ライダーのような、「次は何が来るんだ?」という感じとか、思わずツッコんでしまうところが多くあります。
そして今回、夏休み映画で『ゼンカイジャー』と『セイバー』を合わせたわけですよね。

それは、ダブルアニバーサリーそのものをテーマにするためってことですね。

それ、どれくらい前から考えてたんですか?

割とギリギリまで。

(笑)

東映はだいたいギリギリなんで。映画の撮影もギリギリでしたね。「公開が7月だから、ここまでに撮影しないと間に合わないよ」って言われていたのを全然破っている。

ありがとうございます(笑)。では最後に、今回の『スーパーヒーロー戦記』に込めたメッセージって、どのようなものなんでしょうか?

(白倉さんの方を向いて)キラッ……!

難しい質問を白倉さんに差し向けようと体の向きを変える武部さん
武部さんから難しい質問を受け渡される白倉さん。

もちろん50周年だ45作目だという長寿シリーズになれたのは、視聴者、観客って呼ばれる人たちがずーっと入れ替わり立ち替わり含めて支持してくださったからこそです。
で、今回アニバーサリー=お祝いというのは、我々スタッフにとってのお祝いではなくて、ファンの方々にとってのお祝いであり、我々は仮面ライダーや戦隊を祝うというより、ファンの人たちを祝っているというつもりではあるんです。
でもそんなこと言ってたら非常に総花的な話になって焦点がボヤけるから、今回はその代表を作ることにした。それが鈴木福って人が演じるキャラクターなんです。作り手も受け手も、とにかく関わった人すべてを「おめでとうございます」と祝いたい、というのがメッセージですかね。「おめでとう」がメッセージっていうのも変なんですけど。

「みんなで祝おう!」ってなる。

『スーパーヒーロー戦記』では、その意図が達成されました?

それは、福くんのおかげ。ラストシーンは泣けるようなものになってるんじゃないかな。

僕じゃなくて「あの方」が……。

「あの方」も含めてだけど(笑)。そこにさらに、御年95歳、『ゴレンジャー』から始まる戦隊シリーズ初期の作曲をしてくださった渡辺宙明さんが、いい曲をつけてくださっているので。

収録時点ではまだ映画は見れていないですが、福さんの役柄や、「あの方」とは何なのかも含め、映画を楽しみに観たいと思います。今日はみなさん、ありがとうございました!

取材後記

 今回の取材時点で、編集部は福さんがどういう役なのかだけは伺っていて、「あぁ、なるほど!!」となりましたが、まだ映画は見ていなかったので、いったい「あの方」がどなたかも非常に気になりました(笑)。

 というわけで『スーパーヒーロー戦記』、ぜひみなさんも見に行ってみてはいかがでしょうか。

スーパーヒーロー戦記 | 2021年 夏 ロードショー! http://movie-rider50-ranger45.com/

 ちなみに平成仮面ライダーを見直したいと思ったら「東映特撮ファンクラブ」という月額960円のアプリに入ると全作見ることができるので(地味に)おすすめです。

 最後にちょっと余計な話が挟み込まれましたが、このテアトルロードでは芸能にまつわるさまざまな情報を発信しています。ぜひまた、覗きに来ていただけたら幸いです!

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(取材・編集:テアトルロード編集部/構成:中野慧/撮影:荒川潤)