スターになるにはアクション俳優を目指すのが近道!? 知られざる”アクション”の世界を、浅井星光先生に聞いてみた

連載コラム

アクション女優/監督/コーディネーターとして活躍し、テアトルアカデミーで講師も務めている浅井星光先生

 みなさんは「アクション俳優」という職業をご存じでしょうか? 「俳優」というとどうしても、「役になりきれる」「セリフに情感を込めて、表情とともに表現できる」ということに注目して見てしまいがちです。

 でも、役者が大きく動いたり戦ったりするアクションシーンも、映像や舞台の重要な見せ場のひとつ。

 昔から世界ではジャッキー・チェントム・クルーズジェイソン・ステイサムなど数々のアクションスターが生まれ続けてきました。最近の日本でも『るろうに剣心』での佐藤健さんの激しいアクションが注目され、近年ますます「アクション」の需要が高まりつつあります。

 そこで今回、テアトルロード編集部は、アクション女優・監督・コーディネーターで、テアトルアカデミーで後進の指導もしている浅井星光(あさい・ほしみ)先生に「アクションとはなにか?」についてゼロから教えてもらうべく、取材してきました!

 幼少期にテレビドラマ「熱血あばれはっちゃく」坂口みどり役でデビューし、90年代からはアクションの現場を中心に、数々の映画・舞台への出演や監修を手掛けてきた浅井先生。果たしてどんなお話が飛び出すのでしょうか――?

浅井星光(あさい・ほしみ)イメージ写真

浅井星光(あさい・ほしみ)

アクション女優・アクションコーディネーター・アクション監督として、多数の映画・舞台・ゲームへの出演やアクション監修を手掛ける。『あずみ』の映画化に携わり、以後、漫画版『あずみ』の武闘モデルを務め、武闘シーンの監修にも携わった。現在はテアトルアカデミーで講師も務め、次世代アクションスターを輩出するため奮闘中。

剣も銃も“身体の延長”、身体全部が武器になる

今日は「アクション」の世界で長年活躍されてきて、テアトルアカデミーで講師も担当されている浅井星光先生に、「アクション」について詳しく教えてもらえればと思います!
アクションって映画やドラマ、特撮なんかでも馴染みがあるわりに、どうやって作られているのか、業界事情はどうなっているのか、あまり知られていないところですよね。

嬉しいです、よろしくお願いします! 日本ではまだまだアクションの地位が低いので、もっと知ってほしいんです。アクションの大切さを広められるなんて、素晴らしい企画です。

取材開始直後から「アクションの大切さを伝えたい!」と、明らかにやる気満々な浅井先生。

ありがとうございます(笑)。まず大前提として、浅井先生は「アクション」というものをどう捉えてらっしゃいますか?

来ましたね、その質問。これは私たちも悩むところなんです。いくつか言葉があるんですが、まず「スタントマン」と「アクションアクター」は別物です。
理想は分けて考えない方がいいのですが・・・、スタントマンは一般的なイメージ通り、訓練をうけていない俳優さんが怪我をしないように本当に危険な爆破や飛び降りなんかを担う方たちですね。
アクションアクターは、俳優さん自身がアクションを演じることを指します。
それから、俳優さんのアクション吹き替えをすることは「ボディダブル」と言います
そして、作品によってはそういったアクションシーンを構成・監修する「アクションコーディネーター」や「アクション監督」が存在します。

映画ファンの間では、「この作品はアクション監督が◯◯さんだから期待できる」みたいな楽しみ方がありますね。

アクションコーディネーターはアクションを構築する人です。
アクション監督は、そこからさらに踏み込んで映像編集まで携わって、芝居の全部をアクションの面から統括する役割ですね。「このカット割りにするなら、この手をこういうふうに変えよう」とか。
海外だと、作品によっては全体の監督よりもアクション監督のほうが権限が大きい場合もあります。

へぇ、そうなんですね!

専門性が高くて、ダメな場面では「ダメ」と言わないといけない仕事ですからね。そういうふうにジャンル分けされています。
そしてアクションの中身の話をすると、今の日本の制作現場では「殺陣」と「擬闘」をひっくるめてアクションということにしよう、という風潮が強いんです。

すみません、「擬闘」とは……?

「殺陣」といったときは剣を使うアクションで、「擬闘」は素手で戦うアクションですね。
殺陣と擬闘を両方できる人は少ないんです。ただ私としては、その2つを別々に考えてる時点でアクションじゃないと思っちゃうんですよね。

「殺陣も擬闘も、専門性はもちろんあるけど、どっちもできてこそのアクションなんです」と語る浅井先生。

剣や銃という“武器”も腕の延長です。身体の全部が武器であって、身体が使えるから武器が使えるというのが本当のアクションだと思うんです。
でも、これを言うと、「あなたが両方できるからそう言えるんだ」って言われちゃうこともあって、なかなかこの考え方を広げられていないんですが……。

でも実際、ひとつの作品の中で「素手だけで戦うキャラクター」「剣でしか戦わないキャラクター」って簡単にパキッと分けられるものじゃないのは視聴者目線でもわかります。

そうですよね。そしてこうやって整理してようやく、最初の質問「アクションとは何を指すのか」に答えることができるんですが、私の中では「芝居をベースにした総合芸術」です。肉体の隅々まですべてを使って、感情を表現するもの。
お芝居は何でできてるかと言ったら、感情のドラマでできています。人を殴るシーンなら殴るまでの経緯、拳をグッと握る瞬間の表情で怒っているのか悲しみながら腕を振るっているのかが見える。そこがドラマを見せるうえで大事なものだと思ってるんですね。それがなかったら試合になってしまう。

試合じゃなくて演技なんだ、と。

初めて人を殴る場面なら、殴った後にどういう表情になるのか、手が痛いならそれをどう表現するのか。そういう細やかなところまでお芝居が行き届くからこそ、観る人の心がつかめると思うんです。戦っている姿を観て悲しくなったり切なくなったり、そういう感情を呼び起こせる。

ドラマのDVのシーンも重要な「アクション」

自分が好きな作品のアクションシーンを思い出しても、ただ動けているかどうかじゃなく、そこに込められた感情を受け取っていたと思います。

人を突き飛ばすシーンなら、なぜ突き飛ばしたのか、表情が映っていなくても拳や腕に表情があるはずなんです。そこに憎しみや復讐心があるのか、絶望があるのか、それによってドラマが引き締まるんですね。
そしてそういうときに、安全に行うのもアクションなんです本当に突き飛ばしたら怪我をさせるじゃないですか。そうじゃなくて、圧をかけずに安全に突き飛ばす。そういう動きひとつひとつがアクションです。

「単に突き飛ばすだけなら誰でもできるけど、それじゃ怪我しちゃう。そうはさせないのが我々プロなんです」と語る浅井先生。

ただ突き飛ばすだけなら誰でもできるけど、怪我をしないように突き飛ばすのが技術なんですね。

そう、技術です。物を投げるとき、映像だと画角的に必要な角度というものがありますよね。アクションをやっている人は狙ったところに自在に投げられるんです。手から物が離れた、その先まで責任を持つ。意外と気づかれていないですが、いわゆる「アクション映画」ではない作品でもアクションシーンって山ほどあるんですよ。

具体的には、どんなところなのでしょう?

たとえばドラマでよくある、DVのシーンです。

あっ、なるほど……!

「さぁ、やるぞ」って戦うよりも、腹が立って自然に蹴ったり殴ったりするほうが難しいんです。気持ちが入りすぎて相手に当ててしまう可能性が高いから。

しかもDVのシーンとなると室内が多いでしょうから、狭くて危なそうです。

そうなんです。そこで俳優さんがアクションをやっていれば、当てないように訓練を受けているので大丈夫なんですが、日本はなかなかそうなっていない。

それがまさにさっきの”技術”の話になってくるわけですね。作品を作る監督にも、そういう理解はあるんでしょうか?

人によりますね。アクション監督という存在に重きを置いている監督の現場はちゃんとしています。
以前、NHKのドラマでものすごく激しいDVのシーンがあって、本来はボディダブルはやってないのですが、光栄なことにお世話になっているアクション監督さんからのご指名で、勉強させてもらいました。
髪の毛を掴まれて壁に投げつけられて、棚に倒れ込んで置いてある瓶を全部壊したり、テーブルに叩きつけられて向こう側に転がったり。

ほぼヤンキー漫画の世界ですね。だいぶ危険……。

そう、危険でしょう。重視してくださる監督は、そういう場にちゃんとアクションコーディネーターやボディダブルを呼んでくれるんです。でも大半の現場では「なんとなくこんな感じで殴って」って監督が言ったらそのままスタッフさんが伝えて、おしまい。
もし滑って転んだときにこの角度だったら危ないとか、こうやれば失敗しても大丈夫、というのをわかってらっしゃらないんですよね。私はそれを変えたいと思っています。アクションに携わっている人たちは皆さんそう思ってらっしゃるんですけどね(笑)。

せっかく浅井先生の経験された現場の話が出たので、もっと詳しく聞かせてください。経歴を拝見すると、映像作品、舞台、ゲームと、幅広いジャンルの作品に携わっていらっしゃいます。出演映画だと北村龍平監督の『VERSUS』(2001年)はリアルタイムで観ていて、すごく印象深いです。
それから同じく北村監督の『あずみ』(2003年)にもかかわっていらっしゃるんですよね?上戸彩さんがアクションというので話題になりましたよね。

北村龍平監督、上戸彩主演で2003年に公開された『あずみ』。画像はAmazonより。

『あずみ』は、「アクションやったことない女の子がいるから、指導してくれない?」ってお話をいただいて現場で色々とお手伝いをしました。『あずみ』のようにアクション経験のない方への指導で関わったり、場合によっては私自身がボディダブル(吹き替え)をする時もありますね。

アクションシーンって実際どういうふうに作るの?

浅井先生はアクションを演じるだけでなく、演出をつけるお仕事もたくさんされています。
さきほどの話で言えば、アクション監督、アクションコーディネーターに当たると思うんですが、そういう場合はアクションシーンをどうやってつくっているんですか?

私の場合は、キャラクター設定と、役者さんがどういうふうにお芝居したいのかを綿密にうかがって、「その性格、キャラ設定、武器の特性を活かすとしたらどう闘うか」「それに対して、受ける側はどうか」というところから組み立てていきます。これは私が俳優だからなんでしょうね。そうやってつくる方は少ないみたいです。

大きなストーリーの流れがあってここでパンチして、というのはお互いの間に了解がないと成り立たないですよね。下手したら殴られちゃうわけで。映像ならさらにそこでカメラの動きもある中で、具体的にはどう仕上げていくんですか?

アクションをつくるときは「Vコン(VTRコンテの略)」をまずつくります。それをもとにカメラマンさんと監督とディスカッションしながら「こうしよう」「こう動こう」と決めていきます。

そこから役者さんにも演技を付けていく。

殴られるほうも、ひたすら丸まって耐えるのか受けて対抗するのか、キャラクターによって違いますよね。そこを計算して監督に「ここでこういう表情を入れてほしい」「ここで拳だけ握ってほしい」というような相談をします。それがないと、感情のない格闘シーンになってしまうから。それなら試合を見た方がいい! にならないように、セリフがないところでどう表現するか、それを念頭に置いてアクションのカットをどう入れてもらうかを監督に提示していくんです。

とにかく「カメラワークの意識」が大事!

まさにさきほどの話にあった、お芝居ありきだということですね。映像作品ではカメラとの連携も必須になると思いますが、そこはどう調整してるんですか?

そう、カメラワーク! これは本当に大事で、アクションをやるなら全部理解しておかないとダメなんです。

それこそ『VERSUS』もそうですが、北村監督はカメラをグワーッと使いますよね。あの時期以降のアクションでは、そういう撮り方が増えたと思います。一体どういう連携でつくっているんだろう、といつも思っていました。

もう計算ですね。カメラがどう動いてるのか、アクションを演る人は常に意識しています。「カメラがこう来るならこっち側に入らなきゃいけない」「主人公に被らないよう、主人公が素敵に見えるようにうまく倒れるにはどっちの角度がいいか」とか。そのうえで相手に怪我をさせないようにするところまで含めて、技術ですね。

アクション映画だと、好事家の間では「こんなすごい撮り方をしてるんだ」というのが盛り上がることもよくあります。メイキング見るのも楽しみのひとつだったり。

『るろうに剣心』の谷垣健治さん(※1)なんかは、カメラマンさんが対応できないシーンは自分でカメラ持っちゃうんですよ。『るろ剣』で屋根の上を走るシーン、谷垣さんが自分でワイヤーに吊られて撮ってますからね(笑)。

※1 谷垣健治:アクション監督。ドニー・イェンのスタントマンとしても知られる。

谷垣さんは香港でアクションを学んだ、業界の第一人者。日本のアクション界を牽引する存在として、浅井先生も託すところが大きいそうです。

すごい(笑)。ちょっと専門的な話になりますが、カメラの性能もどんどん進化していますよね。そこはどんな影響があるんでしょうか?

カメラによってコマ数が違う(※2)ので、事前にどのカメラを使うか確認して、そこに合わせた手の付け方を考えます。

※2 カメラによってコマ数が違う:1秒間の動画を構成する画像の数。コマ数が多いほど動画はなめらかになる。

コマ数が少なかったら動きを少なくする、というような考え方ですか?

コマ数が少ない場合には、かえって丁寧に動いてもらいます。早回しすると、不自然になりますし、コマ数が少ないのに、コマを抜くと動きが飛びすぎて不自然だったり、かえって、迫力がなくなったり…。
コマ抜きは、早回しと違って、不自然じゃなくスピードが上がるんです。
スーパースローは、めちゃくちゃスローになるので、あえて早く動かず、わかりやすくゆっくりめに動くようにします。
カメラの性能が上がると、鮮明に捉えてくれるので、風景などはとても綺麗で良いのですが、アクションになると、画面が綺麗すぎて、粗い画面よりも迫力がなくなってしまうこともあるのですが……そこは監督とカメラマンにお任せなところです。

舞台作品をつくるときは「オタクの視点」を忘れない

浅井先生はテアトルアカデミーのユニットBEAT PARADOXの公演のほか、『戦国BASARA』や『BIOHAZARD』といったゲーム原作舞台、宝塚にもかかわっていらっしゃいます。舞台はカメラがなく客席との距離もあって、映像作品とはアクションの作り方がまた違ってきますよね?

舞台を見に来る方って、お目当ての人、いわゆる“推し”がいることがほとんどじゃないですか。

推し、いますね。

出演者とファン層を考えて、同時に何十人が戦っている場面でも「この視点からだとこう見えて楽しい」「この座席だとこういう表情が見えるんだ」ってお客さんに思ってもらえるようにスパイスを入れていくんです。そうした工夫がリピーター獲得につながるんですよね。他の殺陣師の方には「そんなこと考える必要ない」と言われてしまったりしますが、こういうふうに考えるのは、私自身がオタクだからかもしれませんね。

そうですね、オタク心を本当によくわかっていらっしゃる(笑)。
仕事の関係で2.5次元舞台を観る機会が多いんです。映像と違って吹き替えもしようがないなかで、かなり高度なアクションをやっているなと思うことは多々あります。

私もそういった作品に関わることがありますが、なかなか大変です。道具ひとつとっても、竹光ではなくて「ジュラルミン製のものを使いたい」と言われたり、「めちゃくちゃ重い銃を使いたい」と言われたり。
ヴィジュアルにこだわるのは大切なことですが、衣装も含めて大変な重さを背負ってアクションをするなんて、やったことない人にはまず無理です。そういう現場では、私はすごく戦います。「制作費が高く付く」と言われても、「人間1人が壊れるほうが高いんですよ」って。

それは当然そうですね。でも、2.5次元作品もそうですが、舞台作品は特にヴィジュアルが譲れない部分ではあります。

宝塚の殺陣をつけたこともあるんですが、マントや衣装の映え方をすごく重視しました。『All for One~ダルタニアンと太陽王~』(月組公演/2017年)という三銃士モノで、剣闘のシーンではレイピアを構えたら必ず肘でマントを「ザッ」とやるんですね。そうするとお客さんは「かっこいい!」って思うじゃないですか。私も「かっこいい!」って思いました(笑)。

宝塚ファンの心理までわかっている制作者、心強さしかありません。

かっこよさそう。

それと、女の子には特に転び方を重点的に教えます。「やられの美学」ってあるじゃないですか。どんなやられ方が気の毒に見えるか、そこからどうやって復活するのか。舞台『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』(2018年)で日向坂46の子たちのアクションコーディネートをしたときには、そこを懇懇と伝えましたね。みんなハマって転び方の練習ばっかりしてたんで、「武器も使おう、やられてばっかりじゃないよ」って言いました(笑)。女の子はヒールやスカートの衣装が多くて、また別の難しさがあるんです。

ゲーム原作の舞台だと、女の子が女の子らしい衣装でアクションする作品が増えていると思います。

そういう作品で男性が女性の役者に指導すると、特に剣を使うときが顕著なんですが、ガニ股になっちゃうんですよ。男性はヒールを履いたことがないので、そこで生まれる動きの制限を知らないんです。結果、おかしなことになる。
だから私、男性の殺陣師が困ってるところに呼ばれてアドバイスを求められて「ここはヒールなんで重心が違います」とか「こっちの手のほうがいいです」とかお話をしたり、「もっとこうしたら、女の子としての強さが出ていいと思う」などのアドバイスをさせてもらったりします。

アクション業界も男性優位な部分はあるんですか?

女性がすごく少ないんです。監督としてのクレジットで仕事をしてるのは、もしかしたら私くらいかもしれません。

「水泳帽をかぶって…」『ファイナルファンタジーVIII』の裏側

ここまでお話をうかがってきても、浅井先生の仕事が本当に多岐にわたっていることはよくわかるんですが、もう一個どうしても気になっていることがあって……経歴を拝見すると『ファイナルファンタジーVIII』『真・女神転生』『トレジャーハンター』ほか、ゲーム作品のアクションアクターとしてクレジットされていますよね?

よくぞ聞いてくれました、そうなんです。私のアクションの仕事の契機はゲームなんです。

1999年にスクウェア(現スクウェア・エニックス)から発売され、全世界で960万本以上を売り上げた『ファイナルファンタジーVIII』。画像はAmazonより。

ゲームとアクション俳優って、イメージとしてなかなか結びつきづらいところです。

「空手を全面に押し出したらいいよ」と萩本欽一さんに言われて、アクション作品のアーケードゲーム『ラストブロンクス』(1996年発売)の実写版のオーディションを受けに行ったら、アクション監督さんが父のことを尊敬してくださっていて(※3)、オーディションで蹴りを一発、見せたら「浅井さんって……哲彦さんの娘さんですか?」って。だから父の名前で受かったようなものですね。26歳の頃です。それまではタレントもやっていたんですが、そこで出会ったアクション監督・高橋伸稔さんに師事して、アクションへと完全にシフトチェンジしました。

※3 浅井哲彦氏のこと。日本空手松濤連盟の創設者で、国内外で多くの門下生を育成。ハワイ、台湾に空手を広めた人物としても知られる。

じゃあ本当にアクションの仕事はゲームがスタートなんですね。個人的に、ゲームは仕事としても趣味としてもずっと関わってきてるので、めちゃくちゃ興味深いです。

『ファイナルファンタジーVIII』(1999年)の当時は、モーションキャプチャーの格好がすごかったんです! 自前の五分丈スパッツに黒Tシャツ、水泳帽に髪の毛も全部入れて全身ぴっちりさせて、そこにガムテープでマーカーを装着するんです。恥ずかしかったですね。モブも含めて、ほとんどの役をやりました。

「全身ぴっちりして恥ずかしかった……」と、当時の思い出を語ってくれる浅井先生。あの名作ゲームの陰にそんな苦労があったなんて!

すごい! 『FFVIII』、プレイしてました!
ゲームでモーションキャプチャーを使うって、その頃がほとんど最初期じゃないですか?

そうなんですよ。だから短パンにスパッツだったんでしょうね。前例がないから。

制作側も探り探りだった(笑)。

そうそう。現場でも「空から何か飛んできてびっくりした、みたいな動きをしてください」「いや、何が飛んできたのか言ってください! 大きいものですか、小さいものですか?」「ごめんごめん、隕石」「隕石!?」って。そんなアバウトなことある? って思いました。
別のゲームでは、椅子に座らされて「これ、私は何に乗ってるんですか?」って聞いたら「プテラノドンです」って(笑)。でも私、ゲームオタクなんでめちゃくちゃ楽しかったです。

あ、やっぱりゲームもお好きなんですね!

大好きです。だから技を現実にするのが得意だったんでしょうね。

ゲームで映える動きって、実際にゲームをやってる人間じゃないとわからないところがありますもんね。ゲーム好きが何をかっこいいと思うか、見る側の立場で知ってるのは強いです。モーションキャプチャーのお仕事は、普通のアクションとはちょっと違う面があったりするんでしょうか?

私としては、普通のアクションより難しかったです。『ファイナルファンタジーVIII』がそうだったんですけど、高い坂の上から転がって落ちるシーンなんですが、普通はゴロゴロ、ドーンって転がるから痛みが抜けるんですけど、女子のキャラクターなので内座りになって「てへっ」とリアクションしなきゃいけない。
「もっと首をこっち側に振ってくれ」「可愛く!」って言われても、「限界です!」みたいなこともよくありましたね。

それでもやるのはゲーム好きだから、なのでしょうか(笑)。

はい。ゲーム好きだからこそ、そういう技を人間でどこまでできるか体現したかったんですよね。なおかつ、例えばゲームの中で槍を持つシーンがあったら、「こういう動きにしたほうが緊迫感が出ますよ」というように提案させてもらいながらやっていました。ちょっとしたことで見え方は全然変わりますから。

おそらく当時のゲーム制作者にも、アクションシーンをどうつくるかという知見は少なかったでしょうから、ありがたかったんじゃないかと思います。

時田貴司さん(※4)なんかはすごく喜んでましたね。
モーションキャプチャー、一番好きな仕事ですね。自分がモーションキャプチャーをやったゲームをプレイするのは特別な喜びがありますから!

※4 時田貴司:スクウェア・エニックスのゲームクリエイター。『ファイナルファンタジー』シリーズなど、関わったヒット作多数。

ゲーム業界としても、今海外のゲームはガチガチにモーションキャプチャーを進化させてるので、日本ももっとやらなきゃ、ってなってるんですよね。もっと機会が増えていいと思います。

今でもやりたいので、お仕事待ってます。

【ここでちょっとだけお知らせ】

『VERSUS』のオリジナルメンバーが20年ぶりに集まり作り上げ、浅井星光先生がアクションコーディネートを担当した『暴力無双』が、東映の映像作品レーベル「Xstream46」で現在配信中です! 60秒のPVはこちら。

▼スタッフ(一部紹介)
監督:榊英雄
アクションコーディネート:浅井星光
アクション監督:坂口拓
▼『暴力無双』詳細
https://xstream46.jp/
▼視聴可能チャンネル一覧
https://xstream46.jp/lineup/boryoku.php

アクションをやりたい人が意識するべき4つの要素

ずっとお話を聞いてきて、「アクション」と一口にいっても、そのお仕事の中身は本当に多様なんだとあらためて気付かされました。さまざまなところで需要のあるお仕事だと思うんですが、アクション俳優になりたい人は増えてるんでしょうか?

志す人は増えていると思います。でも、どうやって入ってきたらいいのかわからない人が多いと思うんですよ。私はフルオープンなので、いつでも訪ねてきてほしいです。テアトルアカデミーには「アドバンスクラス」というのがあって、これは外部のタレントさんも通えるオープンな仕組みなんです。ここでアクションアクターズクラスをやっているので、興味があったら門を叩いてほしいですね。

去年の12月には、テアトルアカデミーと日本芸能技術検定協会が一緒に組んで「アクションアクター検定」をつくりました。アクションアクター、つまり俳優さん向けの検定なんですが、子どもからお年寄りまで受けることができるので、ぜひ挑戦してほしい
アクションができるというのは、つまりカメラワークをわかるってことなんです。お芝居をやる上での基礎的な部分を身につけることができますから。

それこそ海外だと、ブルース・ウィリスとか、ジャッキー・チェン、トム・クルーズ、ジェイソン・ステイサムなどなど、アクション俳優と呼ばれるスターは数多いですよね。

海外では吹き替えを使わずに自分でやりたいという俳優さんが多いんです。実際、そのほうがマルチにできるようになりますからね。日本はなかなかそうならなくて……。
「アクション俳優」というとガチで戦うイメージが強いからかと思うんですが、ガチンコで戦うシーンなんてなかなかないですよ。安全にパンチが打てて、安全に蹴れて、安全に転べてお芝居ができる。そして何よりもカメラワークを理解する。それさえできれば、アクション俳優です。

これからアクション俳優を目指す人が、日頃から気をつけておいたほうがいいことはありますか?

ひとつめは「距離感」です。自分で決めた位置に向かって、どんな角度からどんな勢いで走ろうが歩こうが、目的の場所を見ずに距離を保って、同じ距離感で止まれるようにする。それが一番大事です。
テンションが上がると、その距離感を詰めちゃうんですよ。そうするとパンチが届いてしまったり、滑って転んじゃったりしてしまうし、転んだ時に相手にパンチも身体も当たってしまう。

2つ目に「姿勢」ですね。猫背になってしまっている人にアクションはできません。背中が丸まっている状態だと首もお腹もリアクションが取れないから、真っ直ぐに立っていられるようになること。
それから3つ目として、「柔軟性」も大事です。

ケガ予防ですね。

そう。足をグキッとしたとき、足首が柔らかければ捻挫になりにくいけど、硬いと骨折までいっちゃいますよね。自分の身を自分で守るという意味でも、柔軟が必要です。
そして最後の4つ目が、「観察力」。

「観察力」ですか?

身体を自在に操れないといけないので、自分を観察すること。動いたときに「今、肘が外側に出てるな」というのが自分で理解できなければ、いくら「まっすぐ打ち込んで」と言われても直らない。自分の体をどう扱えるか、常に自分と相談することです。
そのためにも、2つ目の「姿勢」が重要なんですよ。最近の若い子は、まっすぐに立てない子が多いです。右の骨盤がズレて右足が短くなってたりすると、骨盤を治すところから始めないといけない。自分の身体がどうなってるのか、これはアクション俳優を目指している人じゃなくても大事だと思います。

「自分も他人も、とにかく観察して記憶すること」

浅井先生は一貫して「アクションとは芝居である」とおっしゃっていました。お芝居に関しても、日頃から鍛えるためのポイントはありますか?

想像力を養って、記憶することですね。

想像力はわかるんですが、記憶も大事なんですね。

悲しい経験をしたら、逐一身体と感情に記憶させるんです。そうすれば「このときの悲しみには、これくらいの呼吸だった。あのときはもっと悲しかった、その時の呼吸はどうだったか」と思い出して、蘇らせることができる。
そこにプラスして、想像したなかで一番悲しいことを上乗せするんですね。「あってほしくないことが起きたらどう感じ、どんな呼吸でどんな姿勢だったか」を想像するんです。これをいつも生徒さんにも言っています。

なるほど。

記憶はほんとうに大事。自分自身を常に観察して、何かあると「今すごく嬉しくてすごく楽しいけど、周りからはどう見えるんだろう?」と鏡で顔を確認します。
「今は悲しいけど、そういうときはこのくらい口角が下がるんだな」とか、そういうことを覚えて再現する。自分に起こった感情をすべて覚えていくんです。

今でも暇さえあれば行き交う人を観察しているそうです。身体を動かすだけではない、アクションの真髄を教えてくれました。

浅井先生は、そういったことを普段から行ってらっしゃるんですね。

職業病なんでしょうね。もともと父に「強くなるために観察しろ」って言われたんですよ。「道端で歩いている人がいたら、歩き方から何発そいつに打ち込めたか想像しろ」「座ってるときに、後ろからいきなり殴りかかられたらどう受けるか、シミュレーションしろ」って。小さいときからそれを繰り返した結果として、芝居の道に来ちゃった。

少年漫画の序盤みたいなエピソードですね(笑)!

みんなそうだと思ってたから、ウチだけだったと知って衝撃でした(笑)。

あらためて、そこまで普段から意識して生活するほどのアクションというお仕事の醍醐味とはなんなんでしょう?

体全部を使った表現であることですね。打撃を受けた瞬間、達人だったらどれくらいスッと受け流せるか、弱い人ならどんなふうに「ウッ」となるか、身体全部を使った表現がキャラクターの演じ分けになる。髪の毛の先まで使えるようになりたいくらいです。自分がパッと動いたときに髪の毛が遅れてファサッとなったら最高だな、とか考えます。

なるほど。

自分が持っている表現を、どこまでも具現化するのにはアクションが最適だと思うんですよ。まつげ1本すら自分が良いように扱いたいですね。

何十年と続けてきても、まだ目指すところがある……まさに達人。

最後にもう一つ、後進を育てる立場として、今後目指しているのはどんなところですか?

アクションの地位の向上と、女性でアクションができる人を増やすことです。
前者は、お金や労災の面も含めてですね。後者はさっきも少し話しましたが、アクションを仕事にしている女性は本当に少ないんです。需要は増えているのに、全然足りていません。私がこの仕事を始めた頃に比べれば人数は増えているけど、アイドルや女優のボディダブルをやれるような体型の人が少ないんですよね。それは結局、女性が見て「私もやりたい!」って思うような作品が少ないからなのかな、と。そして、女性がアクションする作品が少ないのも寂しいです。

たしかに、アクションというとまだまだ男性のイメージが強いのかもしれませんね。

そうですよね。でもワークショップをやると女性のほうが最初は「やだ〜」とか言ってるのに途中からめちゃくちゃやる気になることが多いんです。逆に男性は最初はやる気満々なのに、途中から「ちょっと……」ってなってる(笑)。
活躍できる場所さえ見えていれば、女性のアクション人口はもっと増えると思うんです。だから今、テアトルの映画撮影クラスでは女性を主人公にして、年齢関係なく3カ月でアクションを磨いてアクション映画を撮る企画をやっています。

年齢関係なく、というのも大事ですね。出来上がった作品をぜひ観たいです。

私にできる最大のことは、安全なアクションの指導です。アクション人口を増やすめに、楽しくアクションを通してお芝居の表現を学べるようにしたい。そのためにアクション撮影クラスを開講しました。それを単館上映や配信する予定なんです。観た人が「自分もやってみたい」と思うような作品をつくっていき、女性や子どもが活躍するアクション作品を多く作っていきたいですね!

 今回は、浅井星光先生にアクション業界について詳しくお話を伺いました。アクションというと私たちの生活にあまり馴染みがないようでいて、実はさまざまな映像作品・舞台作品のなかにアクションが隠れているんですね。そしてアクション俳優・アクションアクターを目指す人が一人でも多く出てきてくれたら、と思います。

 さて、この「テアトルロード」では普段はなかなか知る機会のない「芸能」の世界のことや、「表現力」にまつわるノウハウ、そしてテアトルアカデミーの教育に関する情報を発信しています。よろしければまた見に来ていただければ幸いです!

▼よろしければこちらの記事もどうぞ。どれも自信作です!

文・取材・編集=テアトルロード編集部/撮影=荒川潤