【動画あり】みんな大好き『紅蓮華』を歌いこなしたい!そのために、まず最初にチャレンジすべきことって?(講師:亀田増美先生)

連載コラム

 総合芸能学院テアトルアカデミーに入学したら、どんな講義が受けられるの?
……読者の皆様には、そんな疑問をお持ちの方々も多いのではないでしょうか。

 そこで、「テアトルロード」では、テアトルアカデミーが擁する、第一線で活躍する一流講師陣の方々をお招きして、講義の内容の一端が伺えるようなお話を編集部が聞いていくという、週替わりの月間連載をやってみようと思います。

 今週は、青木先生、畠山先生に続いて「歌唱」の講師をしている、亀田増美先生。数々のタレントや芸能事務所にボイストレーニングの指導を行い、テアトルではアーティスト育成専門コース「ON-LABO」でも指導している、大人気の先生です。

※記事の内容は公開時点のものです

亀田増美(かめだ・ますみ)イメージ写真

亀田増美(かめだ・ますみ)

大阪府出身。大阪芸術大学演奏学科声楽専攻卒業。

幼少の頃より童謡を歌い始め多数のコンサートに出演。小学生からは児童合唱団に所属し、音楽コンクールで入賞、ラジオ番組にも出演。
大学在学中にはオペラで初舞台を踏む。 卒業後は活躍の場を東京に移し、多数のオペラ作品にソリストとして出演。新宿区区役所ロビーコンサートや都内の様々な国際交流イベントで、童謡唱歌や日本歌曲など日本語での歌唱で好評を得、さらにはミュージカルにも出演。後進の指導や、地方でのワークショップも精力的に行っている。
門下生からは「テレビ朝日主催 寛仁親王杯 全国子どもの歌コンクール」銀賞受賞者も出ており、その他の門下生も多数のミュージカルへの出演を果たすなど、子どもへの歌唱指導に多くの実績がある。
「歌をうたう事は演じること、歌詞はセリフである!」を根幹に、現役を続けながら指導に当たっている。

 そんな亀田先生には毎月「課題曲:紅蓮華 真の“歌ウマ”になる歌唱講座」という連載をしていただきます。カラオケや動画サイトなどで、すっかり生活に溶け込みつつある「歌」。それと自分らしく向き合い、本当に歌唱力をつけるための方法を教わっていきます。

みんな大好き『紅蓮華』の難易度は……高い

亀田先生の連載では、「歌唱」のレッスンをしていただければと思うんです。そこで取り上げていただこうと思うのが……『鬼滅の刃』でおなじみのLiSAさんの『紅蓮華』です。

もう最近は、みんな『紅蓮華』が好きで、本当に生徒たちも喜びますね。すごく人気の歌なので、この楽曲から入ってもらうのはいいと思います。

ただ、『紅蓮華』の歌としての難易度って、どのくらい難しいのですか?

いや、かなりハイレベルですよ。
ただ、この連載ではテクニカルなことよりは、もっと歌唱する上で本質的な意味で力をつけてあげるための講義をしたいと思います。

『紅蓮華』に話を戻すと……いきなりサビ頭なんてシャウトしますし、J-POPとは言われていますが、ほとんど「ロック」ですね。

みんな大好き『紅蓮華』は、「歌いこなすのはかなり難しい」と評する亀田先生。

いわゆるJ-POPの枠には収まっていないですよね。

私は今の流行ってる曲って二分化されてるように感じてるんです。
まず、あいみょんさんのように、歌詞は若干ドロドロしているけど、ギターを持った女の子が、平和な声で歌う曲。

昔でいうと、YUIさんとかですかね。

あるいは、ひ弱なお兄ちゃんが、昔風に言うと「女々しく」別れた女のことを歌っていたり……。

具体名を挙げると怒られそうな気がしますが(笑)、なんとなくわかります。

「いまの流行歌は大きく2つのパターンに分けられる」のだそうです。

そういう路線に対して、こういうアニメや映画とタイアップして、一発目から「強くー!」ってバシッと決めに来るような激しい楽曲がある感じですね。

実はアニソンの歌手って、ものすごくハイレベルな人たちなんです。下手な人は、聞いたことないですね。あと、共通点は、とにかく歌にパワーがあります。

LiSAさんも、まさにそうですよね。

たとえば、昔LAZYという和製ロックの走りをやっていた影山ヒロノブさんが、ドラゴンボールの主題歌を歌うようになったり。(画像は『ドラゴンボールZ 20th Century-SONGS BEST』Amazonより)

LiSAだけの声の「魅力」とは?

もう少しLiSAさんについて言うと、声のレンジが広いんです。
実は女性アーティストの曲は、音域がそれほど広くないので、男も女も歌いやすいことが多い。ところが、この曲はかなり音域が広いんです。

あと、リズム感も独特ですね。
専門用語で、自分なりに歌い方のリズムを付けることを「アーティキュレーション」というのですが、彼女はその付け方も独特です。なにせ、すべて裏から入ってくるので、私も譜面を見て、「こんなふうに歌う子がいるんだ」と驚きました。

プロの方から具体的に解説されると、納得感がありますね。

しかも、ビルボードのランキングにも入っていて、日本の大人や子供だけでなくて、外国人も魅了されているんですよね。
声の「質」が魅力的なんだと思います。なんか注目しちゃうんですよね。

声の質というのは、その人の声の個性みたいなことですよね。
でも、「魅力的な個性」の声って、どういう声なんでしょうか?

そこは、本当は1時間とか喋れるところですね(笑)。

「歌」にまつわる亀田先生のお話は、まだまだ沢山出てきそうです!

すみません(苦笑)!

ただ、声そのものの「質」は生まれつきなんです。変わりません。
そして、なにが良い声でなにが悪い声なのかについては――究極的には、私は法則は全くないと思います。

例えば大山のぶ代さんなんて、とても個性的な声ですけど、多くの人が気に入ってレコードを購入したでしょう。大事なのは、聞いた人を惹きつける声であることだけです。
だから、私はガサガサの声であろうとも、本当に天使のような声であろうとも、人を惹きつけられてさえいれば、すべて「魅力的な声」と捉えてますね。

最初のレッスン:自分らしく歌おう!

という話を踏まえた上で、この「紅蓮華」で歌唱を講義してもらう講座の初回に行くのですが……今回は「自分なりに歌おう」という内容ですか?

はい。まず、他の誰でもない自分の歌い方で声を出すのが大事なんですよ。
私はレッスンでも子どもたちに、まずは自由に歌ってもらいます。すると、思わず私は吹き出してしまったりするんです。でも、それって私の心に、やっとその子の表現が届いたということなんです。

「まず自由に歌うことが大事」と、力強く言い切る亀田先生。最初は「うまく歌えているか」を気にせずに歌ってみるのがよいのかも!

まずは自分の歌い方で伸ばしていかないと、ダメだよ、と。

結局、LiSAが完璧にコピーできても、LiSAはもういるから、むしろそんな人は要らないんです。
だから、答えなんてないんですよ。
喉が壊れると後戻りできないので、それだけは止めますが、あとはもう自由。
そうやって歌うと、どんどん表現が魅力的になっていくんですよ。
ちょっと歌ってみますね。

かなり自由に歌われましたね!

はい、それでいいんです。
公園で散歩したり、お風呂で鼻歌を歌うときのように、まずは自然に出てくる歌い方で、皆さんも歌ってみてください。
実は、これが皆さん自身が芸能をするときの「第一歩」なんです。

実際、さっきのお話を聞いていると、LiSAさん自身が、他にはいない「個性的な表現」をしている人で、だからこそ魅力的なんですよね。

はい、そうです。
歌唱のテクニックなんて、自分らしく歌う先に、後からいくらでも積み上げていけます。

だから、まずは皆さんも私がいま好きにやったように、ぜひ自分の歌い方で『紅蓮華』を歌ってみてください。

歌唱のテクニックよりも先に「自分らしい表現をする」ことが大事……簡単なようで難しいお話でした。これからの連載で、亀田先生の歌唱指導の真髄がしだいに明らかになっていきます。

 というわけで、初回の亀田先生のレッスンのお題は、なんと「自分らしく歌ってみよう」でした。あんなにテクニカルな視点でLiSAさんの歌唱の魅力を分析していただいたのに、講義としては全然そういう話は出てきませんでした。

 でも、この連載は、こんなふうに進行していきます。テクニックの手前にある、本当に大事な「歌う」ということの本質。また来月も、亀田先生に教わっていきましょう。