【動画あり】滑舌を良くするには「舌」より「顎」が大事? スラスラ話すためのコツと練習法(講師:畠山真弥先生)

連載コラム

 総合芸能学院テアトルアカデミーに入学したら、どんな講義が受けられるの?

 ……読者の皆様には、そんな疑問をお持ちの方々も多いのではないでしょうか。
 そこで、「テアトルロード」では、テアトルアカデミーが擁する、第一線で活躍する一流講師陣の方々をお招きして、講義の内容の一端が伺えるようなお話を編集部が聞いていくという、週替わりの月間連載をやってみようと思います。

 今週は、先週の青木先生に続いて「演技」の講師をしている、畠山真弥先生。文学座出身の正統派の演劇キャリアをお持ちの先生ですが、「こんにゃく体操」なんていう不思議な体操の指導をしていたりもする、とてもユニークなお方です。

畠山真弥(はたけやま・しんや)イメージ写真

畠山真弥(はたけやま・しんや)

1964年生まれ。俳優。こんにゃく体操講師。

文学座付属演劇研究所入所後、タイムリーオフィスに所属。「仮面ライダークウガ」「徳川慶喜」「タイムスクープハンター」、舞台「冬物語」「リチャード3世」など多数出演。また、「こんにゃく体操」という身体訓練を故宮川睦子氏、故大沢喜代氏に師事し、現在様々なところで指導している。こんにゃく体操教室主宰、桜美林大学非常勤講師。著書:『疲れがスーッと消える!超脱力こんにゃく体操』(講談社)

 そんな畠山先生には毎月「まず身体から! もっと自分を好きになる体操」と題して、たくさんの役者さんに教えてきた、自分を魅力的に見せるための様々な体操を教えてもらいます。

 その初回の講義は、とにかく気にする人が多い「滑舌」について。自分の話し方が「嫌い」という人に多い、滑舌の悪さを克服する方法を聞いていきましょう!

滑舌の良さは「生まれつき」で決まってしまう?

今日は滑舌の講義をしてくださるとのことですが……そもそも畠山先生が滑舌に興味を持ったキッカケはなんですか?

養成所時代、エラい人にいきなり「滑舌」を指摘された経験を語る畠山先生。

自分の滑舌が悪いからですね。
劇団養成所にいたときに、毎年の査定で落とされて、所長に理由を聞きに行ったんですね。
そうしたら……開口一番に「畠山は滑舌がなぁ」と。

第一声で言われるのは、相当ですね(笑)。

それから、もうあらゆる滑舌トレーニングをしました。
けど、本当にキレイに喋れるのは……そのトレーニングからしばらくの間だけ。それで自分が下した結論は、「滑舌は生まれつき」なんだな、と。

いきなり企画が崩壊しそうな話ですが……(苦笑)。

そうなんですよ(笑)! ただ、ふがいない話ですが、本当なんです!

例えば、声優事務所にいる滑舌のいい役者にコツを聞いたら、「オマエには悪いけど、そもそも苦労したことないからなぁ」みたいに言われたり(苦笑)。声優になるレベルの人は、もう生まれつきなんでしょうね。
実際、滑舌は顎の骨に声が響くことと関係していて、エラの張っている人が、やっぱりいい声を出すという話もあります。

とはいえ、先生のお話を聞いていると、本当に声がよく響いてくるし、聞き取りにくさは感じないんです。やっぱりトレーニングで学んだコツみたいなものはある気がします。

実は今日、まず「滑舌」の話を聞きたいと思ったのは、やっぱりインターネットには自分の喋り方を、やけに気にする人が多いからなんです。特にアニメとかが好きなオタクの人って、役者でもないのに異常に滑舌を気にする人が多いじゃないですか。喋りに自信がなくて、それが自己肯定感のなさに繋がっている人も多いんです。

そういう話で言えば、生まれつき恵まれた人のようになるのは無理でも、滑舌で失敗しないための「こうしたらダメだ」というコツは言えますね。

それでも、十分に大きいです!

滑舌で失敗しない3つのコツ

じゃあ、3つほど簡単なコツを、お伝えしようと思います。

まず第一に大事なのは、これも自分の「ふがいなさ」をまた喋るようで恐縮ですが……「慌てないこと」です。経験上、これは本当にそうです(苦笑)。

なるほど(笑)。
喋りが苦手な人は、そもそもオドオドしていますよね。

しっかりと「これを伝えたい」という意思を持てば、言いたいことを伝える喋り方になります。精神面のお話ですが、本当にこれは大事なんです。

その上で2つ目にテクニックを言うと、「助詞の発音」に気をつけることです。

「◯◯~~」とか「〇〇です」とか、名詞の後ろについて「言葉をつなげる役割」の言葉ですね。

これは特に長い発話のときに大事なんです。「私はー、何々でー」みたいに、「てにをは」を飲むように喋って発音を疎かにしちゃうと、もう言葉がフニャフニャとなっていくんですね。
逆に滑舌のいい人でも、伝えたいことがハッキリしないように聞こえるくらいです。

確かに、いま自分も言われて気づいたのですが、ハッキリと何かを相手に言いたいときには、逆に「てにをは」なんかの助詞をものすごく強く強調していますね。

そこも加減なんですけどね。「私は! 今日! 学校で!」みたいに「は」や「で」を極端に強く喋ると、変に子供っぽくなったり、わがままな印象をあたえたりしますから。

滑舌を気にしすぎるのが果たして良いのか……というのは、後でもう一度話してくれます。

ともかく、慌てずに、きちんと助詞を発音するように心がける――この二つを意識するだけで、相当に変わると思いますね。

なるほど。本当にシンプルなコツですね!

「顎」がキーポイント

そのうえで最後にお伝えしたいのが……顎の運動です。
滑舌で大事なのが、実は「顎」なんです。

滑舌には「顎」が大事だという畠山先生。このあと、動画でも顎のほぐし方を解説してくれます。

顎なんですか。むしろ「舌のトレーニング」が3つ目かなと思っていたのですが。

滑舌って、漢字では「舌を滑らかに」と書くくらいですからね。
もちろん、声楽家の人なんかが舌を巻いて「ダララララ」とやる、いわゆる「タングドリル」という舌の運動なんかもあります。ただ、これができるかも、やっぱり遺伝らしいです。イタリア人なんかは、そういう遺伝子なんですかね……。
ちなみに僕はできるんですよ、なぜかこれだけは。他にも、文章を割りばしをくわえて音読してみたり、母音だけを抜き出して音読したり……。

ただ、そういう声楽や演劇の人がやる舌の運動の手前で、そもそも「顎」は本当に大事なんです。

少し意外なんですが、どういうことなんでしょうか。

人体の仕組みを言うと、そもそも人間の体は「関節」を軸にして動くわけです。だから人間の動きとは、すべて「関節運動」とさえ言える。そのときに、「喋る」という行為で機能しているのが、まさに顎の「関節」になるんですね。

ところが、最近は携帯電話みたいに本当に小声で話せてしまうツールが出てきたでしょう。そうなると、顎をあまり使わないから、顎の機能がどんどん弱まってしまうんです。

そもそも現代人の顎が退化しているという話もあるし、みんな最近はコロナであまり喋らないようにしているし(苦笑)、そうなると顎の動きが弱まっているというのはありそうです。

だから、そこで、僕が教えたいのが「顎のマッサージ」なんですよ。
ちょっと実演してみせますね。

おお。そしたら、動画を回させていただきますね。

ありがとうございます!
このトレーニングを行うと、やっぱりストレッチみたいに、顎の動きがよくなる時間が、持続するんですかね。

これやった後は、最初の10分くらいは、かなり滑らかです。3時間とかは持たないですよ(苦笑)。

ただ、仮にそのくらいの時間で喋るときは、逆に筋肉がほぐれてくるので大丈夫です。

以上の3つ、ぜんぜん難しくないと思うので、ぜひ実践してみてください。

そもそも、滑舌は治す必要があるの?

ただ、最後に一ついいですか。滑舌って、「別に治す必要があるのか?」という話もあるんです。

「そもそも滑舌って治す必要あるの?」という、演技のプロらしい本質的な問いかけでした。

実は、僕はあらゆるノウハウを試した上で、訓練をやめてしまったんです。

ええええ! それはなぜですか。

結局、滑舌をあまりに気にしすぎると、セリフからニュアンスや自分の「味」が消えていくんです。あるとき、人から「そんなに滑舌マシーンみたいに喋らなくても……」と言われて、ハッとしました。

自分の恩師からも「たどたどしい喋り方だって、そのお陰で、むしろ正直で素直な人間に思われることはあるよ」と言われました。

……仕事なんかでも、滑舌よくハキハキした人が立て板に水で話して、かえって警戒心を持たれることはありますからね。

もちろん、あまりに言葉が聞き取りにくければ、上のようなトレーニングをしたほうがいいと思いますけどね。
結局、大事なのはその人の「本当に言いたいこと」が伝わることです。滑舌だって、その人の個性であり、表現のひとつなんですから。

そういう意味では、「自分の個性」を認めるというのも大事そうですね。
連載のテーマに繋がりそうなところですが。

はい。そうすると、どんどん自分のことが好きになるし、自分のことを好きな人はどんどん魅力的になります。これは演技をする上でも大事なことなので、ぜひ次回以降、しっかりと話していきたいですね。

 対話のコミュニケーションに苦手意識がある人が気にしがちな、滑舌。畠山先生からは、そのコツを教わると同時に、自分の個性なのだから、その癖を認めるのも大事という話がありました。
 こんなふうに畠山先生の連載では、身体とその体操をつうじて、自分を好きになっていく方法を考えていきたいと思います。次回も楽しみにお待ちください!

文・取材・編集=テアトルロード編集部/撮影=荒川潤